小さくてもがんばれ! 「三代目ちび丸」!
闘牛大会に出場する牛は、主に南部牛から系譜を引く「日本短角牛」という種類の牛です。例年、150頭もの雄牛が生まれますが、闘牛になるのはそのなかから選抜された10頭ほど。将来的に残るのはさらにその数頭といわれています。
150頭のなかから選抜された牛というと、体格のよい大きい牛ばかり出場しているように思われがちですが、じつはそうでもありません。
その点で目を見張ったのは「三代目ちび丸」。ちび丸は名前の通り、出場した闘牛のなかではかなり小柄な牛で、相手の牛とも体格差がありました。
しかしちび丸、力において決して負けてはいません。押されてしまうときもありましたが、小さな体でがっと押し返し、見事な勝負を繰り広げていました。
「今年の二歳牛は大きくて、体格のよい牛が多いです。ただ、体格がいい牛が強いかといえばそうでもないんですよ。メンタルが強いかどうかがとても大事で、その強さは試合を重ねていって発揮されていきます」(司会の新井谷さん)
もちろん勝負は引き分けになるのですが、やはり押しているか押されているかは素人目線でも見ていてわかるもの。体格差のある相手に決して劣勢ではなく、むしろ追い込んでいるとさえ見えたちび丸の闘いぶりは見事でした。体格がすべてではなく、牛の性格や戦略が活きてくるのも、闘牛の面白いところです。
激しい攻防戦! 最後を飾った三歳牛の闘い
二歳牛の取り組みが一通り終わると、一回り大きな〝三歳牛〟が登場。二歳牛よりも場慣れした闘いを見せてくれました。
大会の最後を飾ったのは「一星龍」VS「虎龍」です。
さすがは三歳牛。何をするのかは完全にわかっていて、入ってすぐ興奮で尻尾を反り上げ、いきなり頭を合わせます。一星龍が虎龍の首を頭で押して、虎龍がそれを受け流す。ぐるぐると回り、ちょうど中央で頭を合わせた力比べが始まりました。
しかし、二頭は決してその場に留まることはありません。一星龍は猛烈な力で、下から虎龍をぐいぐいと押し込み、虎龍も決して頭を離さず、うまくぐるっと回って体制を立て直します。押して押されての攻防戦です。一星龍が優勢でしょうか。
両者はしばらくの間、激しい戦いを繰り広げていましたが、再び場内の中央に寄ったところで勢子がうまく分け、試合終了です。非常に迫力のあるぶつかり合いでした。
この闘牛大会では牛たちの戦いも見ものでしたが、勢子の姿にも目を引かれました。掛け声をかけて威勢をつけたり、激しい戦いを繰り広げる牛たちを、手綱を握って上手くコントロール。
このような闘牛の激突のなかでは、少し分けるところを間違えれば、人も牛も大怪我に繋がりかねません。そういった意味では、勢子の判断力、上手に引き分けにする技術がいかに重要であるかがわかります。
遠方でもOK! 闘牛のオーナー募集中
すべての試合が終わると、最後には三歳牛との写真撮影・ふれあいの時間が設けられました。あれだけ激しい戦いをしたあとの闘牛です。気性が荒いようにも見えますが、意外にもとてもおとなしい。目の前の一星龍を見ていたのですが、子どもたちが顔をさわっても、嫌がるそぶりもありませんでした。闘牛は状況をよくわかっているようです。
ちなみに、この「一星龍」は、地元民ではなく千葉県船橋市の方が所有する牛です。
そんな遠くの方がどうやって、と思うかもしれませんが、じつは闘牛自体は誰でも購入することができます。
闘牛に必要な初期投資はおおよそ40~50万円。そこにエサ代、飼養管理費として、毎月3万円ずつの費用がかかります。しかし、共同で牛を飼うことも可能で、購入後は畜産農家の方が牛を預かってくれるので、かなり手が出しやすくもあります。闘牛のオーナーになるのは、意外とハードルが低いのです。
今回の闘牛大会では、デビュー戦の牛がほとんどとは思えないほど非常に見応えのある試合ばかりでした。ここまで闘牛たちを間近に感じられる機会はなかなかありません。
次回以降の開催は2023年6月11日(日)に「つつじ場所」、9月3日(日)は「しらかば場所」、10月15日(日)に「もみじ場所」となっています。前売券は1000円、当日券は1200円、中学生以下は無料です。
つつじ場所以降では、1tを超える巨大な牛たちも登場し、さらに激しい戦いを繰り広げます。闘牛たちの角突きは、生で見ると迫力満点! ぜひ直接その目で見に行ってみてはいかがでしょうか。
【データ】
■大会名:平庭高原闘牛大会
■開催場所:平庭闘牛場(久慈市山形町来内20-13-172)