アウトドアに精通した人々のお気に入りキャンプ場を、本人の実体験に基づいて紹介していくリレー連載です。今回は、関西圏で活躍するアウトドアライターの根岸真里さんが選ぶテン場を、全3回に渡ってお届けします。
リフト終点に隣接するこじんまりとした野営場
四国の徳島県にある剣山。西日本第二の高峰(標高1955m)にして、古くから修験道の山、山岳信仰の対象として敬われてきた霊峰でもある。一帯は剣山国定公園に指定され、豊かで美しい自然が守られている。
剣山は観光リフトが敷設されており、駐車場からわずか15分で山頂までの登山道の中間点まで登れる手軽さと、日本百名山にも名を連ねる山であることから、非常に人気が高い。山頂まで往復しても3時間程度、南西側にある次郎笈を周回しても4時間ちょっとという手軽さのため、山上で泊まる人はほとんどいない。そのおかげで今回紹介する「西島野営場」では、静かでゆったりと山の夜を堪能できるのが魅力だ。
剣山リフトは、山麓の見ノ越駐車場側の乗り場が「見ノ越駅」、山上側が「西島駅」。標高1420mの見ノ越から、標高1750mの西島まで、約830mを15分で結んでいる。西島駅近くに広がるのが、西島野営場だ。ここまでハイクアップするなら約50分。剣神社の境内を通り、ブナの巨木が林立する心地よいトレイルなので、片道は歩いてみるのがお勧め。
また、三嶺方面への縦走プランでも使える。筆者は、2回目の剣山で、その縦走プランを組んでいたのだが、想定外の大荒れとなって、山頂で耐風姿勢から動けない事態となり、撤退した苦い思い出がある。
京阪神からのアクセスだと、日帰りするのは時間的にやや厳しいので、ココで1泊するとゆったりと楽しめる。
標高1700mからの雄大な眺望を独り占め
西島野営場は、〝野営場〟という名称はあるものの、一般的なキャンプ場としての設備があるわけではない。ただ、ササヤブの中に平坦地がいくつかあるだけ。トイレは駅舎の並びにあるが、水道もないし水場も遠い。管理人もいないので、届け出も必要なければ、利用料がかかるわけでもないが、「勝手に来て勝手に泊まる」わけなので、何かあっても自己責任。一応、トイレの隣に避難小屋があって、急な荒天になったりしたときには逃げ込める。
実は、最初にこの山に来た時、台風一過の好天を期待して来てみたら、吹き返しの風が猛烈に吹きはじめ、設営後に張り綱の補強に出たら全身ずぶぬれ。それ以上荒れるようなら撤退しないといけないかもしれないと思ったのだが、避難小屋の存在は心強かった。あれ? 1回目も2回目も荒天に阻まれている私って…… 呼ばれてなかった?(その後は、おかげさまで好天に恵まれた)
そんな場所だからこそ、標高1700mの山中で、静かな夜と朝を独占できるのが魅力だ。