経験から導き出されたスタイルやこだわりを紹介
本書に登場するブッシュクラフターたちは職業や経歴も十人十色。どういう経緯でそのスタイルに至ったか、どんな考え方でそのスタイルを実践しているのか。どんな道具を、どのように携行しているのか。そして現場では、どのように過ごしているのか。同じ「ブッシュクラフト」というカテゴリの活動でも、面白いほど多彩です。
著者は、実際にサイトを構築し、火をおこすところから共に時間を過ごしながら、じっくりと話を聞いて、それぞれのブッシュクラフターの考え方や哲学を紹介しています。
例えば、1章で紹介されているのは、北海道で猟師をしている久保俊治さん。アメリカのハンティングガイド養成スクールで学び、現地でガイドをしていたこともあるとか。マイナス20℃にもなることがある北海道で、たった一人でクマを追うその暮らしは、レジャーで自然の中に入る人々とは一線を画したものです。
ほかにも、ネイチャークラフト作家の顔を持つ人、アウトドアインストラクター、ブッシュクラフトというジャンルを広めるための活動をしている人……多彩な顔を持つ人々が登場します。普段は都会で働きながら、週末にブッシュクラフトを楽しんでいる人たちもいて、それぞれにいろんなスタイルを持っていることがよくわかります。
本書で書かれているのは、単なる野外生活のハウツーではなく、ここに登場する人たちの自然との付き合い方や、生き方そのものなのかもしれません。
ブッシュクラフトというキャンプスタイルを、いきなり誰もが実践できるわけではないでしょうが、大自然への畏怖とリスペクトを忘れずに、もう少し、自然そのものを味わってみたいな、と思わされました。とりあえず、次の休みにはタープでも持ってウラヤマへ行ってみましょうか。
【データ】
■書名:『ブッシュクラフターズ BUSHCRAFTERS』(2023年4月3日刊/山と溪谷社)
■URL:https://www.yamakei.co.jp/products/2822580490.html
■著者:見城 了(けんじょう・りょう)
■プロフィール:1973年、三重県生まれ。カメラマン。アウトドア媒体での仕事も多く、知識も豊富。プロダクトデザイナーや、アウトドア雑貨ブランド主催、各種媒体に寄稿するなどマルチに活動している。旅と外遊びの道具のブランド「Peregrine Design」主宰。
■URL:http://ryokenjo.com/
■評者 根岸真理
1961年、神戸市須磨区生まれ。1歳前に親に連れられ須磨アルプスで登山デビュー。ハイカー歴60余年、アルパイン歴30年のアウトドアライター。『六甲山を歩こう!』(神戸新聞総合出版センター)ほか六甲山関連本を4冊上梓。『神戸新聞』のおでかけ情報欄「青空主義」に月イチで六甲山情報を執筆中。