キャンプに登山、野外での活動などが楽しい季節になってきました。次の休みはどこへ出かけようかと、あれこれプランを立てる人も少なくないでしょう。
ただし、野外には美しい景色や楽しい場所だけでなく、危険もいっぱいあることを忘れてはいけません。そのひとつが猛毒をもつ生物たちです。実は、危険な生物は意外に私たちの身近な場所にもいて、知識や備えがないと大変な思いをし、時には命にもかかわります。自然を相手にする際は、常に細心の注意を払いたいものです。
今回は磯遊びや海水浴、釣りやシュノーケリングなど、海のレジャーで気を付けたい毒魚たちと、刺されたときの対処法をご紹介します。
※各生物がもつ毒は、分析の結果判明している成分のうち特徴的なものを記載しています。
あまりの痛みに悶絶! やっかいな嫌われ者のアイゴ
刺されると激痛が走り、それが何時間も続く。そんな恐ろしい魚がアイゴです。
太平洋や日本海、東シナ海、伊豆・小笠原諸島、南西諸島のサンゴ礁域や岩礁地に生息し、成長すると体長25~30cmになります。
体色は黄色から暗褐色まで生息環境に応じて異なりますが、白い斑点模様があるのでそれと見分けられるでしょう。また、大きくていかにも痛そうなヒレも特徴的です。
アイゴは背ビレ、腹ビレ、尻ビレに毒のトゲをもっています。刺されると患部が大きくはれて痛み、症状が重いときはマヒ症状が翌日以降も消えないことも。
堤防や磯でよく釣れる魚ですが、針にかかったら決して素手でつかんだりしないこと。また、死んだアイゴでも毒は残っているので、海岸に打ち上げられていても注意が必要。調理の際にはヒレを最初に取り除くようにしましょう。
アイゴの毒はタンパク毒なので、もし刺されてしまったら、患部を洗って毒をできるだけ吸い出し、40℃以上のお湯につけて温めるといいでしょう。熱によって毒素が分解され、痛みが和らぎます。お湯が手に入らない場合は、カイロなどで温めると効果的です。
華やかな姿は猛毒のサイン! 海底に咲く花のようなハナミノカサゴ
アイゴよりもさらに強い毒をもつといわれるのがハナミノカサゴです。背ビレなどに毒があり、刺されると激しい痛みとむくみの症状に見舞われます。
駿河湾より南の岩礁域とサンゴ礁に生息する魚で、縞模様の長いヒレをなびかせながら泳ぐ姿はとても優雅です。
ダイビングでよく見かける魚で、稀にこちらに突進してくることがあるので油断は禁物。同じ仲間のキリンミノは磯にもいるため、磯遊びの際にも要注意です。また、釣れることもあるので、針から外す際に素手でさわるのは絶対にやめましょう。
その毒は、アイゴやフグなど多くの生物がもつタンパク毒。刺されてしまったら、真水で患部を洗い流し、やけどしない程度の熱い湯につけるとよいとされています。
刺されたことによる死亡例はこれまでに確認されていませんが、指や腕などがパンパンにはれ上がり、耐え難いほどの痛みが数日間続くこともあるのだそうです。
毒の強さは魚類最強!? 死亡例もあるオニダルマオコゼ
小笠原諸島や奄美大島、沖縄周辺の浅い海に生息するオニダルマオコゼは、ハブ毒の30倍以上ともいわれる強い毒をもつことから恐れられている魚です。
体長は大きいもので40~50cmにもなり、その見た目は非常に独特。岩に擬態して魚などを待ち伏せし、動かずに何日も同じ場所にい続けるため、体表が藻に覆われることもあります。
背ビレのトゲに刺されると、激しい痛みとしびれ、さらには呼吸困難や意識障害、水疱などの症状があらわれ、最悪の場合死に至ることも。2010年にはダイバーが刺されて死亡した例も報告されています。
浅瀬や潮だまりの岩の間にいたり、砂に埋もれたりしてじっとしているため、誤って踏んでしまい刺されることが多く、海水浴や潮干狩りで海に入るときにも気を付けたい存在。硬く大きい背ビレのトゲが、スニーカーやサンダルの底を突き破り、毒液を人間の体内に注ぎ込むのです。
刺されてしまったらすぐに傷口を洗い、大きなトゲを取り除きます。毒の主要成分ベルコトキシンはタンパク毒の一種なので、まずお湯などで温め、症状の軽重に関わらず早急に病院に行くようにしましょう。