2023年(令和5年)5月14日、北海道幌加内町の朱鞠内湖で、釣り人1名がヒグマに襲われ死亡する痛ましい事故が発生しました。春は、クマが冬眠から目覚めて活発になる時期。各地での目撃情報も相次いでいます。
明治以降、令和に至るまで、日本で起きた数々の熊害死亡事故を網羅した『日本クマ事件簿』(三才ブックス)。過去の事例から学べることは多くあります。同書掲載の記事より、2016年(平成28年)5〜6月に秋田県鹿角市の十和利山で、4人が死亡、4人が重軽傷を負った事例を転載します。
すべての遺体に食害の跡、現場付近で雌グマが射殺される
そして、ついに4人目の犠牲者が出る。6月10日午前10時過ぎ、田代平にて性別不明の遺体が発見された。タケノコを採るため7日に入山し、行方不明となっていた十和田市在住のD(74歳)だった。先の3名同様、内臓などが食害された状態で、枯葉や土が遺体を覆うようにかけられていたという。
同日午後2時頃、遺体発見現場から20m離れた笹藪で、加害グマと見られる雌が射殺されている。体長約130cm、体重70kgほどで、胃上部に人肉と頭髪が詰まっていたことから、D殺害への関与が確実視され、複数の研究者たちは「4人は同じクマに襲われたと考えるのが自然だ」と話した。
しかしこの雌グマ、右鼻腔上部と鼻梁、右前頭部に傷があり、26日に男性を襲ったクマと特徴が一致しない。果たして一連の人身事故は、本当にこの雌グマ1頭によるものなのだろうか──。