九州中部の阿蘇山は、阿蘇五岳(高岳、中岳、烏帽子岳、杵島岳、根子岳)を中心とした世界最大級の大きさを誇るカルデラ。そんな阿蘇山のダイナミックさを手軽に感じられるおすすめの場所が、標高1321mの杵島岳です。
今回は杵島岳山頂の外周を歩くお鉢めぐりについてご紹介します。
雄大な阿蘇を満喫するパノラマウォークに出発!
お鉢めぐりとは、噴火口の周りを一周すること。とくに有名なのは、富士山山頂のお鉢めぐり、すなわち「富士山頂周回線歩道」です。もともとは富士山頂の八つの峰を巡ることから「お八巡り」と言われたとか、火口の形を鉢に見立てたからといった説がありますが、現在では富士山に限らず、火口を一周できるスポットならそう呼ばれています。
杵島岳の登山道入口から頂上まではスニーカーでもOKな舗装路でしたが、お鉢めぐりの道はこれまでとは様相が一変。スコリアと呼ばれる無数の穴が開いた小さな石や土、そして野焼き後の草の上を歩くことになります。
午前の早い時間のトレッキングだったからでしょうか。登山道の途中で、霜に覆われたくぼみを何度か目にしました。春になり、日中は暖かさを感じるようになっても、最低気温が氷点下まで下がることもある阿蘇地方。春先だとこんな風景にも出会えます。
さて、噴火によって杵島岳ができたのは今から約3000~4000年前。山頂にはいくつかの火口があって、大きなものだと直径500mにも及びます。巨大な〝鉢〟の内側には、2016年(平成28年)の熊本地震によって崩れた箇所も。お鉢めぐりで火口壁の稜線を歩く際、脇道にそれると危ないので気をつけましょう。
撮らずにはいられない平野に佇むミニチュア火山
杵島岳の北側から西側にかけて広がっている雄大な阿蘇谷を眺めて、気持ちよく歩いていると、麓にまるでミニチュアの富士山のような山が見えてきました。阿蘇のマスコット的存在、米塚です。
約3300年前の噴火により誕生した標高約80mのかわいらしいこの火山は、均整のとれた円錐状のフォルムが魅力。山全体が草で覆われているため、野焼き後には黒一色に、夏には目の覚めるような鮮やかな緑に包まれます。
伝説によれば、神武天皇の孫である健磐龍命(たけいわたつのみこと)が、収穫した米を積み上げて作ったのが始まりなのだとか。
そして、山頂のくぼみは掌で米をすくって人々に分け与えた名残と言われています。そんな言い伝えのある米塚にぜひ登ってみたいところですが、こちらも熊本地震の影響で頂上部の火口の縁に沿うように亀裂が入り、現在は登山禁止に。ここは阿蘇谷に佇む美しい姿を、高い位置から拝んで堪能することにしましょう。