人とクマと日本の在り方
山﨑先生が教える大学の学生が、北関東に生息するツキノワグマの遺伝子から科学的に研究を行った結果、メスよりもオスのほうが長い距離を移動し、自分の生活する場所を確保することがわかりました。
「そうすると、新しいエリアに先陣を切って入ってくるオスグマに対しての対処法などについて、考えなければなりません」
今後ますます都市に人が集中し、限界集落が増え、獣害対策の担い手も少なくなるなか、市町村はクマと人との〝あつれき〟や共存について、これからも考え続けなければなりません。
「私たちが行っていることは生態学ですが、この問題をつきつめていくと今後の地域のあり方、グランドデザインをどうしていくのか、社会学的な観点から日本の在り方にもつながる話しだと思います。クマは、そんなことを教えてくれているのかもしれません」。
■監修者:山﨑晃司
■プロフィール:東京農業大学教授。地域環境科学部森林総合科学科森林生態学研究室所属。『ムーンベアも月を見ているクマを知る、クマから学ぶ』(フライの雑誌社)など、主にツキノワグマに関する著書多数。