ヒグマの出没情報を一元化できないか
ヒグマは、最も大きな陸上動物であり日本では北海道だけに生息します。2021年度に駆除や狩猟などで捕殺されたヒグマの個体数は、記録が残る1962年度以降で初めて1000頭を超え、人身・農業被害はいずれも過去最多を記録。
昨今では札幌市街地への出没や、道東で「忍者グマ」の異名を持つ個体「OSO18」の未捕獲などが話題になっています。
そこで、行政担当者の間で今注目されているのが、ヒグマ出没情報をインターネット上に構築されたプラットフォームに収集・集積するクラウド型システム「ひぐまっぷ」です。開発者は、ダッピスタジオ合同会社のウェブエンジニア・川人隆央さんらのチーム。
川人さんは、道路の破損、落書き、街灯の故障など地域・街の問題を共有するサイト「まちもん(FixMyStreet Japan)」を開発・運営していました。道内で行われるIT系のイベントに参加しているうちに、そこで北海道のヒグマ出没情報が、住民通報から報告書としてまとめられ、公表されるまで、場合によっては年を越えるほど時間がかかっていることを知ります。
自治体からヒグマの研究などを行う、北海道立総合研究機構エネルギー・環境・地質研究所(以下、エネ環地研)に届く出没情報も形式が統一されておらず、時には分かりにくく「それではムダが多い……」と一念発起したそうです。
「ひぐまっぷ」が総務省の「ICT地域活性化大賞2017」で優秀賞に
「まちもん」と同様に、GIS(地理情報システム)を使って、リアルタイムで情報共有ができる「ひぐまっぷ」開発に取り組みました。
エネ環地研や、位置情報に関する課題解決をサポートするIT企業であるMIERUNEの古川泰人さんらと「森のくまさんズ」を結成。2017年から北海道南部の森町で運用をスタートさせ、同年には総務省の「ICT地域活性化大賞2017」で優秀賞を受賞しました。
現在「ひぐまっぷ」は道内45の自治体で運用されており、運用自治体によってはHPで情報を公開しています。「ひぐまっぷ」ホームページの「全道直近3カ月のヒグマ出没マップ」からも、情報公開中の市町村の情報を見ることができます。
市町村の地図上に出没のピンが立っており、そこは人とヒグマが遭遇した(目撃や足跡、フンの痕跡などを含む)場所の印。
例えば、厚岸町の令和4年度情報でピンをクリックすると「R4.10.6午後4時18分ごろ、〇〇地区〇〇付近でヒグマ1頭を目撃」などの文言や、レポート一覧が出てきます。