生産者の現場取材&現地で実食シリーズ、産地直〝食〟なソトごはん。今回は、宮城県南三陸町志津川湾で養殖されている「戸倉っ子かき」をご紹介します。
日本初のエコラベルASC国際認証を取得
宮城県の南三陸町は、町の面積の約8割が森林です。森に雨が降り注ぎ、川になり里の作物を潤わせ、さらにその水は栄養を蓄え志津川湾に流れます。それにより海は水草や海藻、植物プランクトンが豊富になり、豊かな海をつくります。
この栄養豊富な志津川湾で養殖されている、身が詰まった1年もののカキが「戸倉っ子かき」。通常は2~3年かけて育て水揚げされますが、この戸倉地区の養殖カキは1年で水揚げ。それでも2~3年ものと同様の大きさです。
殻をこじ開けると、殻からはみ出すほどのぷりっとした張りで、宝石のような白い身があらわれます。口に入れると磯の香りと塩気が広がりながら甘く、えぐみのないスッキリとした味わい。
「戸倉っ子かき」は2016年、日本初となる海のエコラベルASC国際認証を取得。湾内の環境や生態系に負荷をかけない養殖であることが認められたエコな海産物。
ASC国際認証の基準は7原則、125項目にわたる厳しい審査をクリアしなければならず、定期的に更新する必要がある厳しいものです。
カキ棚を3分の1に減らし環境配慮型に転換
このカキを生産するのは、戸倉出張所カキ生産部会に所属する20~70代まで35軒の漁業者たち。
養殖は延縄式という、水深7~8mの場所で育てる垂直方式で行われており、縄1本に約50kgのカキが付着しています。縄をつり下げるいかだといかだの間隔は、他の養殖場では見られないほど広い40m。
東日本大震災をきっかけに、カキ棚をそれまでの3分の1に減らして密度を下げ、品質を上げるとともに、生産サイクルを早くすることで、津波被害に遭ってもすぐに復活できる体制に転換しました。
水揚げしたカキは滅菌海水で22時間かけて浄化。生食用として宮城県の非常に厳しい衛生管理検査を毎週受けながら、少量生産でひとつひとつを大切に育てています。