旅の本屋「のまど」の店長・川田氏がキャンプ・アウトドア好きにぴったりの本を選びます。今回は、焚き火について、のみを記述した、とっても稀な本。渡航国40カ国を超える著者だからこそ書けた、様々な焚き火の楽しみ方が満載です。
半端ない焚き火についての情報量!?
本書の何が凄いって、焚き火についての情報量がとにかく半端じゃない点です。
人類と火の歴史からはじまり、焚き火の際の薪が燃える現象についての考察、薪に使われる様々な樹の種類の特徴、薪割りのやり方や必要な道具の紹介。また、焚き床の種類や薪の組み方の紹介、着火の種類とその方法や、チェンソーや斧の使い方、薪ストーブの楽しみ方まで。実際にキャンプ場などで焚き火をする際の実践方法が、非常に細かく紹介されていて凄くためになります。
また、焚き火を使った料理も、写真と詳細なレシピ付きで数多く掲載されていて、どの料理も美味しそうなのですが、ギリシャ風串焼き肉スブラキやシシカバブ、ハンガリーのグヤーシュ、南米ペルー風パエリアなど、世界各国を旅したことのある阪口さんならではの料理のチョイスが秀逸です。
焚き火を通して得られるものって……
そして、何よりも本書の一番のオススメポイントは、著者の阪口さんの焚き火への深い愛情とそのマニアックなこだわりが、この一冊のなかに濃密に感じられる点ではないでしょうか。
著者の阪口さんは、アウトドアカメラマンとして国内、海外を旅して、様々な地域の暮らしを撮影する際に、生活に欠かせないたくさんの焚き火を見てきたなかで、焚き火の楽しさ、美しさに惹かれ、その魅力、素晴らしさを伝えるべく本書を書きあげたとのこと。
とくに、オーストラリア大陸を自転車で一人旅をした際に、キャンピングカーで旅する現地の老夫婦がステーキを焼いてくれた焚き火や、太平洋戦争の遺骨収集する一団の取材で訪れた南国ソロモン諸島のガダルカナル島で満点の星空の下で仲間たちと焚き火を囲んだ記憶が心に残っているそう。焚き火には人の心を癒したり、落ちつけたりする不思議な力があるんだということも伝わってくる1冊です。