下流や別の沢にも野湯が噴き出す
降水量が少ない状況が続くと、沢の水量が少なくなる。冬季は積雪になるため流量が減少しやすく、湯温も下がりやすい。しかし冬季でも安心して入湯できる湯船もある。更に数十~100mほど下ると別の沢が南側から合流し、そこには湯量豊富な湯船があるのだ。
帯水域の保水量に余裕があるのか、常に周辺のあちこちで温泉が湧き出しており、豊富な湯量は冬でも枯れない。裏切られることのない安心の野湯である。冬は人が来ないためあまり整っておらず堆積物も多いので、工事が必要なこともある。
また、合流した南側の沢の少し上流にも、冬でも枯れない湯船が存在する。スノーシューを外して川底全体が硫黄分で黄色くなっている沢を遡ると、数分で裏の湯が見えてくる。石とブルーシートでしっかりと湯船が作られており、豊富なお湯がジャンジャンと注がれている快適な野湯だ。しかし豪雨の度に壊れるようなので、いつもあるとは限らない。
荒湯地獄から尾根を挟んだ場所にある裏の湯は、有毒ガスのリスクも小さくなる。
グリーンシーズンの荒湯地獄は、アクセスもラクで先人が工事した湯船が残っていることもあり、初心者でも野湯の素晴らしさに手軽に触れることができる。
反面、他の人が来ている事も多く「自分たちだけの隠れ家」という野湯の喜びは味わえない。積雪期には人に会うことはまずなく、奥深い山奥の秘境にもかかわらず、比較的簡単に「雪の野湯」を満喫することができる。教えたくない貴重な雪の野湯だ。
※私有地を含む場合があるので、野湯を訪れる際は事前に許可を取ることを推奨します。
【荒湯地獄】
■住所:宮城県大崎市
■交通アクセス:JR鳴子温泉駅からクルマで約35分
【プロフィール】
■著者:瀬戸圭祐(せと・けいすけ)
■プロフィール:アウトドアアドバイザー、野湯マニア。NPO法人・自転車活用推進研究会理事。自動車メーカー勤務の傍ら、自転車・アウトドア関連の連載、講座などを数多く行っている。著書に『命知らずの湯』(三才ブックス)、『快適自転車ライフ宣言』(三栄)、『ジテッウ完全マニュアル』(ベースボールマガジン社)、『爽快自転車バイブル』(毎日新聞社)、『自転車ツーリングビギナーズ』(八重洲出版)、『雪上ハイキングスノーシューの楽しみ方』(JTBパブリッシング)、『家族で楽しむ!アウトドア大研究』(水曜社)など。2023年3月現在、足を運んだ野湯はトータルで約100湯。