古くから食材や薬として親しまれてきた野草。どの植物なら食べられるのか、少しずつ見分けられるようになってくると、道端に目を向けるのがきっと楽しくなるはずです。今回も野草研究家として活躍する「ハーブ王子」こと山下智道さんにいろいろ教えていただきます。春に食べたい野草、第4回目はノゲシです。
アスファルトの隙間から顔を覗かせるたくましさ
細い黄色の花びらが密集しているノゲシの花は、タンポポによく似ています。しかし、地面近くで花を咲かせるタンポポとは異なり、ノゲシは茎が上へ上へと伸びて、背が高いのが特徴です。
「ほかにもいろいろ違いがありますよ。タンポポは1本の茎に対して花が1個しかつきませんが、ノゲシの場合はいくつもの花が咲きます。あと、葉っぱの切れ込みがタンポポよりも深くて、どちらかというとアザミの葉のような雰囲気があります」(山下さん)
道の隙間からにょきにょき生えていることも多く、生命力が強そうな印象のノゲシ。それにしても、このギザギザした葉はあまり食用には向いていないような……?
「これが割と食べやすいんですよ」という山下さんの言葉を信じて、食べ方を教えていただきましょう。
葉先だけを贅沢に使って春の苦みを満喫
「ノゲシの葉っぱはそんなにアクがなくて、茹でても炒めてもおいしく食べられるのが魅力」という山下さん。さっと湯がいてから使うのが基本で、茹でた状態のノゲシを食べてみると、ほんのりとした苦みが口の中に広がります。これぞ春を告げる味といったところでしょうか。さてこの風味、「なにかに似ている!」と感じる方がいるかもしれません。それはレタス。同じキク科の植物で、手折ると白い液汁が出る点も共通しています。
「5月頃の咲き始めのシーズンだと、若葉をそのままスープや味噌汁に入れて食べたりもしますね」(山下さん)
ただし、夏に近くなるにつれて苦みが増すので、そのときには塩茹でしたあと、冷水に長めにさらすといいそうです。
「葉っぱを触ったときに、ごわごわして固いなと感じたら、それなりにアクがある証拠。下処理をして、それから汁物や炒めものにすればおいしくいただけますが、気軽に食べるなら葉先だけを採取するのがいいでしょう。たくさん採れますから」(山下さん)