パタゴニアという土地を個性的な切り口で描写している
パタゴニアに王国を作ろうとしたフランス人、ロシアやウクライナのアナーキスト、スコットランド、ウェールズ、ヨーロッパや中東、アジア各国から来た移民など、著者がパタゴニアを旅しながら出会う人々がそれぞれ個性的でじつに魅力あふれるエピソードばかりなので、大自然ではなく、人々に会いにパタゴニアに行きたくなってきます。
そういったパタゴニアにまつわる現在および過去の様々な魅力的な登場人物を重層的に描くことによって、パタゴニアという一言では説明できない複雑な成り立ちの土地の魅力の全体像を浮かび上がらせることに成功している本書は、やはり名著だと言えるのではないでしょうか。
実際に日本からパタゴニアに行くのはお金と時間が相当かかるので気軽に訪れることができない場所なのですが、いつか本書のなかでブルース・チャトウィンが辿った道のりを旅してパタゴニアの魅力を体感してみたい、そんなことを思いたくなる作品です。
【データ】
■著者:ブルース・チャトウィン
■プロフィール:
1940年イングランド生まれ。美術品鑑定や記者として働いたのち、77年本書を発表し、20世紀後半の新しい紀行文として高い評価を得る。ほかに『ソングライン』『ウィダの総督』『ウッツ男爵』など。■評者:川田正和(かわたまさかず)
■プロフィール:
1967年神奈川県生まれ。香川県育ち。明治大学文学部卒。大学を卒業後、出版社に就職するも ほどなくして退社。アルバイトでお金を貯めては世界各国への長期の旅を繰り返すうちに、旅行専門 の本屋をはじめようと決意。書店員を経験した後、2007年に西荻窪に「旅の本屋のまど」をオープ ン。日本で唯一の旅行専門の本屋として国内外から注目されている。
■URL:http://www.nomad-books.co.jp/