クマが人に向かって走ってきたらどうする?
クマと人の距離がある場合、そしてクマが人に気付いていない場合は静かに立ち止まり、じっとしてクマを観察し、やり過ごすのが一番です。
クマとの距離があり、クマが人に気付いている場合は、クマをよく観察し次にどうするかを人間が考えます。さらにクマがこちらに向かってきた場合、走ってくる、またはゆっくり歩いてくるなどパターンはさまざま。
「走ってくる場合は、人にアタックしようとするとき。それでも、途中で急に方向転換をして逃げていくことも多いです。
クマ撃退スプレーは腰に携帯し、いざというときに使えば有効ですが、前回お話したように(https://www.sotolover.com/2023/03/4540/)射程圏内で使うことが条件であり、事前のトレーニングが必要です。クマが走って向かってきたとき、最終的にどうなるかは前を向いたまま待つしかありません」
背を向けて逃げないことがもっとも重要
前述のように体を大きく見せたり、大声を出すなどで、クマが逃げて行ったという事例もあります。しかし、もしも本当に襲ってきたら……。
「地面に腹ばいになり頭と顔を守るような防御姿勢をとることが大切です。手近なもの、持っていた道具を武器にして戦ったという事例はありますがクマは力が強く、頭部や顔を狙ってきます。
一発叩かれただけで、目がとれる、頭の皮を剥がされるなどの重傷を負うリスクは高くなります。防御姿勢でケガを最小限にし、クマが離れるのを待つ方法をおすすめします」
どのような場合でも『絶対にやってはいけない』ことだけは決まっています。それは「背中を向けて走って逃げること」。後ろを向くと、クマに弱いと判断され、衝動的に追いかけられて背後から倒されます。
「やはりクマに遭わないことがもっとも大切です。クマはとても個性的な動物なので、その時々の状態や気分によっても状況は変わります。遭ってしまってからの行動や対策に正解はありません」
■監修者:山﨑晃司
■プロフィール:東京農業大学教授。地域環境科学部森林総合科学科森林生態学研究室所属。『ムーンベアも月を見ているクマを知る、クマから学ぶ』(フライの雑誌社)など、主にツキノワグマに関する著書多数。