近年、ニュースで頻繁に報じられるようになった、クマの市街地出没や人的被害。2021年(令和4年)、北海道における熊害(ゆうがい)事件数は、統計を取り始めた1962年(昭和37年)以来、最多となりました。
北海道以外の山中や市街地でも、クマの目撃情報などが増えている今。アウトドアを楽しむとき、自然のなかに入っていく人間側が不用意にクマに出遭ったり、襲われたりしないよう、どのような注意が必要なのか、クマ研究の専門家、山﨑晃司先生に伺うシリーズの第3回目です。
目の位置が高い人間を怖れるクマ
アウトドアにおいて『どんなに身近な森でも、そこに入ったらクマはいる』と考えること。そして、山や森に入ることがあればクマ鈴、笛、声などの音を出し、人を恐れるクマに対してこちらからその存在を知らせることは、クマに遭遇しないための大切な手段です。
しかし、運悪くクマと出くわしてしまった場合。「クマは人を見て、どうするかを判断します。人は目の位置が高いので、クマからすると、その背後の構造がどうなっているのか想像できず、大きな動物と感じるようです」と語る山﨑先生。
腰を曲げて山菜などを採っているときに、ふと前を見るとクマがいて襲われた、という事例が多く起きます。それは目の位置が低くなり、中腰でいることで弱いものと判断され、倒して逃げた方がよいとクマは考え、襲ってくる場合があると言います。
そのようなことから「とっさの策としては、両手を上にあげて左右にゆっくり振る、あるいは上着を広げるなどして体を大きく見せることはある程度は有効と言えますね」