公共施設や商業施設のほか、スポーツ関連施設、アウトドアにおけるキャンプ場の管理棟などに設置され、よく目にするようになったAED(心臓救命装置)。しかし、それに対する正しい知識や理解は進んでいないのが現状です。AEDの基礎知識や、もしものときの使い方など、AEDに関するすべてをおさらいするシリーズ。今回はその第2回目です。
心臓マッサージとAEDの併用が命を救う
AEDとは、電気信号の乱れによりけいれん状態(細動)となった心臓を、正常な動きにリセットするための高度管理医療機器です。2004年7月から一般の人でも使うことができるようになり、さまざまな場所に設置されるようになりました。
総務省消防庁令和3年度版「消防白書」による、一般の人が屋外で人が倒れるのを目撃した症例のうちの1カ月後生存率を見てみました。119番通報をして救急車を待っていただけでは8.2%、胸骨圧迫(心臓マッサージ)を行った場合は12.2%、胸骨圧迫に加えてAEDを併用した場合はさらに確率が上がり、119番通報のみの場合の約6倍にあたる53.2%もの人が助かっています。多くの命を救うには、胸骨圧迫とAEDの併用の有効性がわかります。
AEDが到着するまで行う心肺蘇生が重要
では実際に屋外で人が急に倒れたとき、どのように救命活動を行ったらよいのでしょうか。一次救命処置と言われる、心肺蘇生とAEDによる電気ショックを行うまでの手順をみていきましょう(引用「救急蘇生法の指針202 市民用」より)。
【手順1】
心停止の可能性のある人を発見したら、まずはクルマの往来など周囲の状況が安全かを確認します。
【手順2】
安全が確認できたら、周囲の人に応援を求めます。「あなたは119番通報を」「あなたはAEDを持ってきてください」と具体的にお願いをし、手分けをして近くにあるAEDを取りに行ってもらいます(片道1分、往復2分が目安)。
【手順3】
同時に、倒れている人の肩を軽くたたきながら、大声で声をかけ、反応を確かめます。上半身を素早く(10秒以内で)見て、呼吸を確認します。呼吸があるかどうかわからない、普段通りの呼吸でない場合は「呼吸なし」と判断します。普段通りではない、しゃくりあげるような不規則な呼吸は「死戦期呼吸」と呼ばれ、心停止のサインのひとつです。呼吸がある場合は、横向きに寝かせて救急車を待ちます。
【手順4】
次にAEDが到着するまで、胸骨圧迫(心臓マッサージ)で、血液を全身に送ります。手の平のつけ根で、倒れている人の胸の真ん中を「強く速く絶え間なく」押します。ひじを伸ばして、垂直に体重をかけ、成人は深さ約5cm、小児は胸の厚さの約1/3胸が沈みこむように、1分間に100~120回のテンポで強く速く胸を押します。胸骨圧迫は、救急車が到着するまで絶え間なく行うことが、脳へのダメージを軽減するためにも大切です。やり方がわからなければ、119番通報時、通信指令員が口頭で指導してくれます。
また、胸骨圧迫は大人が行っても体力が必要なので、1~2分で他の人と交替しながら続けるのがよいでしょう。その場合はリズムを合わせて、切れ目なく行うことが大切です。
次回は、AEDが到着した際の使い方についてご紹介します。
【取材協力】
オムロン ヘルスケア株式会社
URL:https://www.aed.omron.co.jp/