緯度や標高が高い地域のキャンプ場だと、まだ気温が低いので寒さ対策は必須です。寒さによって起こる低体温症や、温めようとして起こる低温やけど、テント内の保温による一酸化炭素中毒事故には十分注意しなければなりません。
今回は低温やけどについて、アウトドア医療のプロで救急医の稲垣先生に聞いてみました。
気づいたときには深いやけどに……
低温やけどとは、医学的には低温熱傷と言われ、「すぐには傷害を起こさないような比較的低い温度の熱源に長時間接触することで起こる熱傷」です。使い捨てカイロ、湯たんぽ、電気毛布、電気あんかなどの熱源を使うことで起こり、下腿、踵、外顆(くるぶし)などの皮膚の薄いところに多く見られます。
徐々に熱せられることで気づかないうちに熱傷状態になり、見た目や痛みの軽さのわりに深刻な状態となっていることがあります。
「低温やけどが起こるのは、俗にいう〝茹でガエル〟のようなカラクリです」と、稲垣先生。火や熱湯などで起きる通常のやけどでは、熱源に触れた瞬間に鋭い痛みを感じます。一方、カイロや湯たんぽといった比較的温度の低い熱源に触れてもほとんど痛みは感じないため、長時間使用し続けていることができます。
そうして熱し続けられた結果、気がついたときには皮膚の表面だけでなく、より深い組織までやけどを起こしている、というのが低温やけどの特徴です。とくに子どもは皮膚が薄いので、深部まで熱の影響を受けやすく注意が必要です。
さまざまな症状は長時間熱源に触れることで起こる
やけどの深さはⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度で示されます。Ⅱ度のうち酷いものやⅢ度になると治りが悪く、後遺症が残りやすいため専門的な治療を要します。低温やけどの場合、Ⅱ度以上となることが少なくありません。
長時間熱源に触れていた箇所に、後になって違和感を感じる、腫れや水疱(水ぶくれ)が出てきた、皮膚が乾燥して白っぽくなったり黒ずんだりしている、または「焼きたてのロールパンのような手触りの皮膚」(稲垣先生談)などの場合は、医療機関を受診しましょう。