旅の本屋「のまど」の店長・川田氏がキャンプ・アウトドア好きにぴったりの本を選びます。今回は、海外から見た日本のサウナ文化についての一冊。流行りのアウトドアサウナについても触れます。
フィンランドから日本のサウナを再確認した著者
本書は、サウナ本場の国フィンランドで暮らし、現地フィンランドの大学で公衆サウナについての論文を執筆。サウナ文化研究家である著者が、日本とフィンランドのサウナ文化の違いなどを通して、日本サウナのオリジナリティを徹底解剖。近年の活気とクリエイティビティに溢れている日本のサウナ施設や愛好家について紹介した1冊です。
著者のこばやしあやなさんは、2011年にフィンランドへ移住し、ユヴァスキュラ大学大学院修士課程を首席で修了後に起業。コーディネート業務を続けるかたわら、フィンランドのサウナ文化のエキスパートとして、日本とフィンランド両国のメディア出演や講演活動、諸外国の浴場文化のフィールドワークを行なっているのですが、日本のサウナブームをフィンランドに紹介する本を現地で出版するため、日本のサウナのことを調べているうちに、日本のサウナ業界が世界のどの国よりもクリエイティブで、エネルギッシュで、人を惹きつけるポジティブな力に溢れていることに気が付きました。
日本のサウナは熱意とクリエイティブに満ちている
サウナの歴史が何千年にも及ぶ伝統のあるフィンランドでは、常識や解釈を覆してまったく新しいものを生み出そうとする革新的な動きが鈍く、長い間大きな変化を遂げていないのに対して、「サウナとはこうあるべき」という伝統や習慣に縛られていないサウナの新興国である日本は、サウナに対する偏愛的なまでの熱意で本場フィンランドのサウナ業界では考えつかないような突き抜けた発想を形にしてゆく、センスと行動力のあるサウナ業界の人々が次々に登場していて、彼らが手がけたユニークな施設が、近年、日本全国に増えているのだとか。
例えば、三重県の最南端にある南むろ郡紀宝町にある飛雪の滝キャンプ場は、ローシーズンである冬の集客を増やすために、テントサウナを設置して、飛雪の滝の滝壺を「究極の天然水風呂」としてサウナとセットで売り出したところ、関西や名古屋、 さらには東京からも来訪者が増えてきているそうです。
また、奈良県山辺郡山添村にある築百年超えの古民家を改築して1日3組限定で宿泊客を迎えるume,yamazoeは、近隣住民が気軽に集まれる開かれたコミュニティの場所を作るために、ホテルに併設した場所に杉の角材をログハウスのように組み上げサウナ小屋と、信楽焼の巨大な釜を使った水風呂を造り、人気を博しています。