堀り終えぬ穴と折れたスコップ
僕は、折れて1mほどのところまで飛んでいってしまったスコップの片割れを拾い、柄がなくなったブレードを掴んだ。そして一心不乱にゴロタ石を掘り起こしてから、ようやく本来の目的を達成したのである。
このとき使っていたスコップは、カナダのコフラン社が作っている「トローウェル」であった。軽くて丈夫で、400円ほどと値段も手頃だ。僕が知るかぎり30年以上前から作られていて、アウトドア業界きってのベストセラーである。
だがしかし、この一件以来、僕は金属製のスコップを使うことにした。アラスカ用には、とくに頑丈なステンレス・スコップU-Dig-It(ユー・ディッグ・イット)の「フォールディングショベル」を手に入れたし、日本国内ではシートゥサミットの「アロイポケットトローウェル」が気に入っている。
重さは、約60gのコフランに対して、シー・トゥ・サミットが約100g、U-Dig-Itは約120g。値段も、10倍近い価格差がある。本体も、価格も、とても重いのだけれども、いたしかたない対価である。
生き物である以上、排泄は避けて通ることができない。都会のなかであれば公共のトイレを探せばいいのだけれど、アウトドア・フィールドではそういうわけにもいかない。ちなみに僕は、いつもトイレセットを装備していて、そのなかにはスコップとトイレットペーパー、フリーザータイプのジップロック・バッグ(ハーフガロン・サイズ)を収納している。これについて詳しくは、また別の機会に紹介したいと思う。
■著者:村石太郎(むらいしたろう)
■プロフィール:
アウトドアライター
1970年、東京生まれ。登山道具やアウトドアブランド、山の道、アウトドアの歴史にまつわる記事をアウトドア各誌やウェブ連載で受け持ってきた。四半世紀にわたってアラスカの北極圏に連なるブルックス山脈を旅する冒険旅行家としても知られている。