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六甲高山植物園で儚くも美しい春の妖精「スプリングエフェメラル」に出会う【近畿エリア】

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  • 早く春の訪れを告げるマンサク
  • 海抜865mの六甲山頂付近に位置する六甲高山植物園
  • 六甲高山植物園に咲くバイカオウレン
  • 六甲高山植物園に咲くセツブンソウ
  • 六甲高山植物園に咲くセリバオウレン
  • 六甲高山植物園に咲くフクジュソウ
  • サトイモ科の多年草であるザゼンソウ
  • 六甲高山植物園の温室に咲くシクラメン
  • 六甲高山植物園の温室に咲くシクラメン

【施設名】六甲高山植物園(兵庫県)

 

早春のごく短い期間だけ地上に姿を現し、可憐な花を咲かせる春の妖精「スプリングエフェメラル」は、温帯エリアの落葉樹の森で、早春に林床を彩る花々のことです。そんな希少な花たちに会える、六甲山上にある植物園を紹介しましょう。

 

冬季閉園中の植物園が花の時期に合わせて特別開園

 

一見すると冬枯れの森。六甲山上、標高約850mにある六甲高山植物園は、北海道南部とほぼ同じ気候のため、冬場は雪が積もることもあるほど寒さが厳しく、約4カ月間閉園となります。

しかし、2月下旬頃から3月上旬頃にかけて、「スプリングエフェメラル」をはじめとする、早春の可憐な花が見ごろを迎えるため、特別に数日間だけ開園。お花が好きな人たちは、毎年この日を心待ちにしていて、遠くからわざわざ訪れる人も少なくありません。

 

 

一番見ごたえがあるのが、大群落を形成して、斜面一面に咲き乱れる「バイカオウレン」。梅に似た白い花を咲かせる常緑の植物で、厳密には「スプリングエフェメラル」ではないのですが、この時期を代表する可憐な花のひとつです。

 

 

キンポウゲ科の「セツブンソウ」はまさに「スプリングエフェメラル」。節分の頃に咲くことから名前がつけられましたが、森の木々が葉を茂らせる初夏には、地上部は姿を消してしまいます。

 

春以外は休眠する「スプリングエフェメラル」の戦略とは?

 

「Ephemeral」は、「はかない」、「つかの間の」という意味で、スプリングエフェメラルは日本では「春の妖精」とも呼ばれている「春植物」のこと。落葉樹の森では、木々が芽吹く前には林床にも日光が当たりますが、木々が葉を茂らせると日が当たらなくなります。

夏でも林床で生えている植物は、半日陰でも耐えられるものたちなのですが、春植物たちは、早春からわずか2カ月ほどの間に光合成をして、日が当たらなくなる夏から先は地上部を枯らして休眠するという生存戦略を採用しているのです。

一年の大半を眠って過ごすため、成長はとても遅く、セツブンソウを例にとると、発芽から本葉が出るまでに2年、開花まで3年を要すると言われています。同じ春植物のカタクリの場合は、7年もかかるのだとか。

 

 

そしてセツブンソウと同じ、キンポウゲ科の「セリバオウレン」も可憐な花です。セリの葉に似た、小葉が切れ込んでいるのが特徴で、直径1センチほどの花もとても繊細で美しいです。

 

 

雪解けとともにつぼみが出てきて、春らしい黄色の花をたくさん咲かせる「フクジュソウ」も、スプリングエフェメラルの代表選手。光沢のある花びらは、まるでパラボラアンテナのような形をしていて、花の中心部に熱を集め、昆虫たちを誘っています。漢字で書くと「福寿草」、古来めでたい花として愛されてきました。

 

 

花の中を暖房して虫を集めるのは、サトイモ科の「ザゼンソウ」もお得意です。紫褐色の部分は「仏炎苞」と言い、中に咲くボールのような花を包み込んでいます。花が発熱するので、仏炎苞の内部はとても暖かく、暖を求めて虫たちが集まってくるそうです。

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