「飯盒」と聞くと、中学校や高校での野外オリエンテーションを思い出す人も多いのでは? そう、じつは誰もが一度は食べたことがある飯盒ご飯。火加減に失敗して、焦げたり固かったり生煮えだったりしたことはありませんか?
想い出の味がしばしば苦味をともなっているのは、青春の味だからではないのです。
そんなこんなで敬遠されがちな飯盒ご飯ですが、人生経験を積んだ今なら完璧な飯盒ご飯を炊けるはずです。しかも焚き火ではなく、炭火を使えば火の調節もラクチン。遠赤外線マジックを使った炭火で炊いたご飯だから、ふっくらモチモチのご飯が炊けます。「NOライスNOライフ」なご飯派のあなたも、これでキャンプであったかご飯を楽しめるのです。
「飯盒」のルーツとあの形や中ぶたの意味とは?
渋い深緑色で真ん中が凹んだレトロな見た目が、これぞ「ザ・飯盒」。兵隊さんたちが戦地で使ったため、「兵式飯盒」と呼ばれています。真ん中が凹んでいる理由は、「腰や荷物に吊り下げた時にフィットするように」とか、「あの形がご飯の熱対流にいい」など諸説あるようです。
市販されている一般的なサイズは4合炊き。飯盒を古臭い「昭和のレジェンド」と侮るなかれ。ご飯を炊くだけでなく、さまざまな調理に幅広く使える玄人好みの強者なのです。
飯盒には中ぶたが付いています。この中ぶたはお皿としても使えるし、計量にも使えます。さらに、炊飯中に仕切りとして使えば、同時に蒸し料理や温めなどもできる優れもの。決して捨ててはいけません。
絶対ハズさない炊飯術.01~下ごしらえ~
ではここからは、飯盒を使った上手な炊飯手順を具体的に紹介します。
まずは米の計量です。内ぶたのすりきり一杯は2合。外ぶたのすりきり一杯は3合。米は2合で約お茶碗5杯分、おにぎりなら5個前後というところ。ちなみに1合の米は150g。1合でも炊けないことはないのですが、すぐに火が回って焦げやすくなってしまいます。炊くときは2合以上がベストです。
飯盒に米を入れたら、ひたひたくらいの水を入れて米を研ぎましょう。内ぶたを入れて、やさしくシャカシャカと振ってもよし。水を数回かえて、ある程度きれいになったらOKです。研ぐ必要のない、無洗米を用意するのもアリ。
続いて、水を入れて米を浸水させます。水量は、米1合あたり200cc(無洗米なら225cc)。2合なら400cc(無洗米なら450cc)という具合です。飯盒の内側に線が2本ありますが、下の線が2合分の米の水量です。3合なら線と線の間。上の線が4合の水量の目安となります。
しっかりと強火にした場合、派手に吹きこぼれることがあるので、若干多めに水を入れるのがおすすめです。火力に不安がある場合はピッタリでもOK。30分以上浸水させましょう(無洗米なら、冬場は1時間以上)。
絶対ハズさない炊飯術.02~炭火で炊く~
浸水させている間に、炭火をおこしておきましょう。強火が必要なので、炭は多めに少し高く積むのがポイント。飯盒を強火にかける際は、高さの調節ができるなら網にのせると安全です。写真は横着をして炭に直接のせていますが、このやり方だと、炭が崩れるとバランスも崩れてしまいます。直接のせる場合は目を離さないようにしましょう。
沸騰するまでは強火。沸騰したら、炭を広げて弱火にして15分ほど加熱します。沸騰して蓋が上がってくる場合は、上に石をのせたり、枝などで押さえたりしておきましょう。沸騰したかどうかを確認したい時は、トングや枝で蓋に触れてみて、湧き上がってグツグツしている感触が伝わってくるかをチェックします。
それでもわからない場合は、ふたを開けて確認してもかまいません。「赤子泣いてもふた取るな」とはいうものの、生煮えや丸焦げのご飯を食べる方がよほど災難です。火にかけた飯盒を持つ場合は、必ず厚めの革手袋を着用するようにしましょう。軍手だけで触るのは火傷のもとです。